須田幸英税理士事務所 事務所通信 平成25年3月号掲載
娘をかばった父親
   先月、がんセンターで大腸検査を受けたことを書いたところ、多くの方から結果はどうであったか聞かれました。おかげさまで大丈夫でした。多くの方がこのコーナーを読んでいることが解りうれしかった反面、余計な心配をかけたことを反省しております。

 ところで、3月に入りめっきり春らしくなってきましたが、北海道ではまだ春は遠く、先日真冬のような状態の中で痛ましい出来事が起こりました。ご承知の通り、強烈な吹雪の中で娘をかばってその父親が凍死してしまったのです。当初のニュースでは知人宅に向かっている途中でこの事態が起こったと言うだけの表現でした。間違いではないのですが、これだけを聞いたとき、吹雪の時は外に出ないに限る。どうして、悪天候の中わざわざ軽トラを運転したのかという位の思いでした。
 ところが、なぜ運転することになったかというと児童センターに預けていた娘を迎えに行った帰りの出来事だったのです。こうなると私の思いも変わってきます。私も娘を児童センターに預けていれば当然迎えに行きます。
 その迎えに行った帰りに軽トラが雪にはまって動かなくなったのです。車内から携帯電話で何度も救助を要請したようですが、除雪車が軽トラの所に着いたのがその2時間後で、父娘は既に知人宅に向かった後でした。二次災害の恐れもあるため捜索は翌朝に延期され午前7時、軽トラの発見地点から300メートル離れた倉庫の前で2人は発見されました。
 新聞によれば、父親は一昨年に妻と死別し、男手一つで娘を育てており大変子煩悩であったとのことです。自分の体がだんだん冷たくなっていく中で、「何としても娘を守り抜く」と言う思いでかばい続けたということを想像するだけで、胸が痛みます。
 今回の出来事はいろいろな不運が重なりました。ひとつは軽トラの中で救助を待っていればその2時間後に救助されていたこと。2つめは倉庫の鍵が開けば倉庫内で救助を待つことができたこと。3つめは2人が雪に埋もれていたところから50メートルの所に民家があり、そこまでたどり着けば助かったこと。しかし、こんな「たら、れば」が通用しない想像を絶するような暴風雪だったのでしょう。
娘の秋音ちゃん(9歳)は父親の死を知らされた後、「北見市に親戚がいるからひとりでも大丈夫です」と気丈に振る舞っていたそうです。
 私は、思わず「これからの人生を逞しく生き、幸せになって欲しい」と願いました。
                所長 須田幸英
 事務所通信3月号掲載
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